前回↓
というわけで今回のテーマは「レディ・プレイヤー1」
アーネスト・クラインの小説「ゲームウォーズ」を原作に、2018年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督*1作品だ。
VR空間「オアシス」を舞台に、オアシスの創始者ハリデーの遺産を巡って、主人公らが活躍する映画なのだが、本作は数多くのポップカルチャーが登場する。
主人公の車が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場するデロリアンだったり、
ヒロインのバイクが「AKIRA」*2に登場する金田のバイクだったり、
作中の仕掛けとして「シャイニング」*3が登場したり、
とにかく数えきれないぐらいに映画やアニメ、ゲーム等の要素が至る所に詰め込まれており、常にわくわくさせ、私の大好きな映画の一つになっている。
そして、この「レディ・プレイヤー1」は7月3日には金曜ロードショーにて地上波初放送が行われた。
「面白いけど、金曜ロードショー等の地上波で放送されることは無いだろう」と思っていた私にとってこんなに嬉しい事は無い。
さて、レディ・プレイヤー1については、実は以前にブログで語ったことがある。
そのため、今回はいつものようにレディ・プレイヤー1との出会いと、私がなぜレディ・プレイヤー1をこれほど高く評価しているのかについて語っていこうと思う。
ちなみに今回はネタバレをがっつり含んで紹介していくつもりなのでそこを理解して見て欲しい。
レディ・プレイヤー1との出会い
私がレディ・プレイヤー1と出会ったのは2018年頃だったと思う。
2017年に「君の名は。」を見に行って以来、一人で映画館に行くというのが一つの趣味になってきたころ、スピルバーグ監督が「レディ・プレイヤー1」という映画を製作しているという事を知った。
その当時はスピルバーグ監督の名前だけは知っていて、「スピルバーグ監督作品なら面白いだろう」と思って、名前だけは知っていた。
そして作品の概要見る限り「VRの世界を舞台にした作品」ということもあり「ゲームが好きな自分はこの手の作品にはハマるだろう」と思って気になっていた。
そして次々に情報が出ていくにつれて「俺はガンダムで行く」の予告を出された時には、もう興奮が頂点にまで達した。
ここまで来たら一人でも見に行こうと思って、私は映画館で見に行った。
作品は非常に良く、恐らく2018年に見た映画の中で一番に面白かった映画だった。
そのあまりの面白さから原作である「ゲームウォーズ」を読んだ。(こちらもかなり面白かった。)
そしてレディ・プレイヤー1から「シャイニング」とその続編の「ドクタースリープ」を見たり、
作中のハリデーの好きな名言として登場したスーパーマンに登場する悪役「レックス・ルーサー」の台詞*4の中から「戦争と平和」*5に興味を持ったり、
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンのかっこよさを改めて実感したりした。
現実こそがリアルと言ったハリデー
さて、私がこの映画を高く評価しているのはハリデーがラストに言った発言「現実こそがリアル」という発言のためである。
この発言、実は見た人の中ではかなり否定的な評価をされがちである。それこそ「自らVR空間作っておいて何言ってるんだ。」とか「オアシスは現実以上の夢のような場所だ。」と感じる人もいると思う。
しかし、私はこの発言を「バーチャルな世界もいいけれど、リアルも大事にしよう。」と感じた。
私はアニメやゲームといった創作物はもちろん大好きだし、その世界にどっぷりはまり込むこともある。だが、創作物以外にも人生には沢山の面白いものや素晴らしいものが存在する。それはバーチャルな空間にではなくて、リアルの中にこそ沢山あるのだ。
そしてハリデーも言っていたが「現実じゃないと美味い飯は食えない。」というのも一つだが、リアルで得られる経験はバーチャルで得られる経験よりも大きいものがある。
例えば、実際に旅行をするのとストリートビュー*6でバーチャルに旅行をして得られる経験と言うのはかなり違う。実際に見て聞いて感じる方が自分への影響力は大きいのだ。
しかし、新型コロナウイルスによってリアルが奪われていくこの社会において、オンライン飲み会*7によってバーチャルな空間での繋がりを求めたり、テレワーク*8やリモート会議など、社内業務の遠隔化が行われるようになってきている。
集まれないからこそオンラインやリモートでわいわいやるというのも現代技術の進歩であると言える。しかし現実世界で実際に集まって飲み会をしたり、ライブハウスでライブを楽しんだりという、密な空間にこそ得られる経験と言うのは沢山あるし、バーチャルな世界で体験するよりリアルの世界で見て聞いて触れるという経験が大事なのである。このことはコロナで改めて実感した人も多いはずだ。
だからこそ以前に紹介したブログでは「SNSやオンラインゲーム等のバーチャルな世界にどっぷり遣っているような人達にこそ見て頂きたい」と書いた。バーチャルな世界だけで満足をして欲しくないと私は思ったからである。
この人生を変えたジャンルでも沢山のものを紹介してきたが、現実には創作物以外にも沢山の興味を惹くものがある。
バーチャルな世界にはまる君たちも現実を大事にしてほしい。(もちろんバーチャルも悪くは無いけど。)
大人になれと言ったミルドラース
しかし、それと似たようなことをゲームのラスボスに言わせた「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」*9についてはもやっとしてしまった。(まあネタバレ見ただけなので好きな人に怒られそうだが)
というのもあれをドラクエでやるというのはゲームの映画化という形で作り上げてきたドラクエの世界を一瞬でぶち壊してしまっているからだと私は思う。
それと、ストレス多い現実の息抜きに「ドラクエの映画でも見るか。」と思ってバーチャルな世界を満喫してる人達に対して「大人になれ。」と言われたら、「言われなくても分かってるし、こっちは息抜きで見てるんだぞ。」という視聴者にとって「的外れな説教」にも聞こえてしまうのかもしれない。
そして、このラストの発言は「ドラクエの世界なんて大人になれない人達のもの」「こんな映画見てないで現実を見ろ」というメッセージにも聞こえ、まずドラクエの映画化を受け入れた原作を作った人達に失礼だし、もっと言うならば「原作とこの作品そのものを否定する」ような結果に繋がると思う。
まあ見たことが無いのにクソクソ言うのは「エアプ*10は黙ってろ」とか言われると思うので、いつかDQ5をクリアしてから見ようと思う。そしてpiraさんがしっかりレビューしてくれるだろう。
さいごに
というわけで「レディ・プレイヤー1編」いかがだっただろうか。
レディ・プレイヤー1のようなバーチャルな世界というのは夢のような世界だと思うし、私もあの世界に一生住んでみたいと思うことはある。
しかし、VRのようなバーチャルな世界やSNSのようなネットによる繋がりというのがすべてではあるとは言えない。
バーチャルな世界だけでなく、リアルな世界を自分の五感で感じ、経験として実感していくことが大事なのだ。
だからこそ、「Reality is the only thing that’s real」(現実こそがリアル)なのだ。
*1:スティーブン・スピルバーグ:アメリカの映画監督。1946年生まれ。「E.T.」や「ジョーズ」、金曜ロードショーで放送していた「バック・トゥ・ザ・フューチャー」など代表作の多くは名作として今も語り継がれている。
*2:AKIRA:大友克洋原作・監督による近未来SF作品。本作における2020年には東京オリンピックが予定されており、その背景が今の2020年を予言しているのでは?とか言われていたりする。
*3:シャイニング:1980年に公開された映画。スティーヴン・キング原作の同名小説を基にスタンリー・キューブリックが監督として手掛けた作品。ホラー映画としては傑作ではあるが、原作との違いが多く、後に原作者自らが監修したテレビドラマ版が制作されていたりする。ちなみに、その続編として2019年に公開された「ドクタースリープ」は原作者監修の下制作されており、なかなかの良作なので見て欲しい。
*4:戦争と平和を読んで単なる冒険譚だと思う人もいれば、チューインガムの包み紙から宇宙の秘密を解き明かすものもいる。
*5:戦争と平和:トルストイ著のロシア文学。ロシア文学という事もあって、名前も長いし分量はかなり多い。人によっては単なる冒険譚だと思ってしまうかも。
*6:ストリートビュー:Googleが提供する道路沿いの風景をパノラマ写真で提供するサービス。世界中の至る所をストリートビューで見ることができるので、自宅の周りを見てみたり、バーチャルな旅行気分を味わうなんてこともできる。
*7:オンライン飲み会:カメラアプリを利用して複数人と自宅で行う飲み会。
*8:テレワーク:インターネットを利用して、自宅やカフェ等の職場から離れた場所から業務を行う形態。在宅勤務。
*9:ドラゴンクエスト ユア・ストーリー:2019年に公開された「STAND BY MEドラえもん」の山崎貴監督による3DCG映画。ドラクエシリーズでも人気の高い「ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁」を原作にし、当時のドラクエ世代やその子世代を対象にした映画だが、評価は低い。
*10:エアプ:作品に触れずに作品について語ること。エアプレイング。